可動域/安定性の改善&強化(ケガをしないための身体つくり)
身体が硬い!!体幹が弱い!!などと指導者の方から指摘される選手の方も多いと思います。当施設では、身体の関節は動きが得意な関節と安定が得意な関節が交互に配置されており、それぞれの役割を担っているという、joint by joint theoryをもとに、可動域ならびに安定性向上のためのトレーニングを実施しております。
joint by joint theory
上の図をもとに例を挙げると、股関節は動きが得意な関節で主に3つの面での運動がありますが、長座体前屈のような動きでは、股関節の屈曲という運動がメインにおき、太ももの裏の筋肉である、ハムストリングスが伸ばされます。この筋肉が硬いと骨盤が後方向に引っ張られやすくなり、骨盤が倒れてしまうことで、姿勢不良の原因となります。姿勢不良になると、安定が得意な関節である腰が過度に動かされるため、腰痛の原因に繋がります。
これを改善するには、股関節の可動域を向上させることや、腰椎の安定性を確保することが必要となってきます。このように股関節を例に挙げましたが、当施設では身体の動きをチェックし、「動きが得意な関節は動かす、安定が得意な関節には安定させるという」考えをもとにスポーツパフォーマンスを向上させるためのプログラムを行なっております。
参考/引用文献
・※1:笠舛拓也,joint by joint theoryと胸郭の位置付け,臨床スポーツ医学,2022,vol.39 No10, p.1036-1039
感覚の統合(視覚,体性感覚,前庭覚)
学校から帰るとスマホなどの画面ばかり見続けている、、よく足をぶつける、、バランスを取るのが苦手、、などに思い当たるものはありませんか?このような選手は、「感覚の栄養」が不足していることが多く、様々な感覚を与えてあげることが大事になってきます。感覚の栄養は眼(視覚)や足裏の感覚(体性感覚)、頭の位置(前庭覚)などがあり、それらの情報を脳へと伝え、脳が必要な情報を統合することで、感覚の栄養が満たされます。そのため、当施設では例として、スポーツ場面で必要な視覚(ビジョントレーニング)やイレギュラーな地面でのバランス力などを刺激し感覚の栄養を与えることで、感覚を統合していきバランス力アップなど様々なスポーツ場面に対応できるようなトレーニングを実施しています。
参考/引用文献
・※1:A・ジーン・エアーズ 著ほか(2020),感覚統合の発達と支援 子どもの隠れたつまずきを理解する,金子書房
筋力トレーニング
小中学生の選手に対して、身体を大きくしたいけど、筋トレってしてもいいの?と疑問に思う保護者の方は多いかと思います。結論から言うと、成長期の選手に対して、不正確なフォームで筋力トレーニングを行なってしまうと身体に対する負担が増え、怪我のリスクともなります。このような状況にある選手にとって、まずは自分の体重コントロールできるように正しい動作を習得することが、大前提となります。正しい動作が身についた状態後に筋力トレーニングを実施することは身体にとって好影響を及ぼします。具体的な効果を挙げると、以下のようなことがいわれています。
※1「筋力トレーニングは筋力、筋パワー、および局所的な筋持久力に加えて、心肺機能、身体組成、血中脂質、骨密度、運動能力、およびいくつかの心理的尺度にプラスの効果を及ぼす可能性がある。」
そのため、正しい動作で行うことができるとトレーナーが判断した場合や目標に合わせて筋力トレーニングが必要だと判断した場合には、負荷を用いたトレーニングを無理のない範囲で実施しています。
参考/引用文献
・※1:Avery D.Faigenbaum,子どものためのトレーニング,NSCA JAPAN,2006,Volume 13, Number 8, pages 46-50
スピード力アップ
足を速くしたい!と思う選手はたくさんいることだと思います!主に疾走速度は、ストライド×ピッチで構成されているため、ストライドやピッチをあげるための身体の使い方を学んだり、その動作で必要な筋肉をつけていく必要があります。
※1 ★ストライド×ピッチ=疾走速度
・ストライド(ステップ長):歩幅
・ピッチ:ある一定時間内における歩数を表すステップ頻度
・接地時間:足が地面についている時間→短い方がいい
・滞空時間:足が離れてから足が着くまでの時間→長い方がいい
当施設では、スピード力を様々な要素に分解し、身体機能を向上させていくことで、スピード力向上のためのトレーニングを行っています。
参考/引用文献
※1:信岡ら,児童の疾走速度とピッチ・ストライド・接地時間・滞空時間の関係,体育学研究,2015,60巻2号 p.497-510
動きの効率化,多様化
動作がぎこちない、スムーズに動けない、指導者から教えてもらった動きがうまくできない…などといった悩みを抱えている選手も多いと思います。そのような悩みを抱えている選手には、様々な動作を行えるように脳と身体をつなげる神経を鍛えることが必要です。
文部科学省による幼児期運動指針ガイドブックには「幼児の場合は、自発的に様々な遊びを体験し、多様な動きが獲得できるようにすることが大切です。」と記載されています。この指針では「幼児期」にフォーカスされていますが、スポーツ場面や日常生活においても、いかなる状況において全てが予測できるものはなく、多様な動きが獲得できるようにすることが大切になります。そのためスポーツを行う選手にとってもこの指針はとても重要なことだといえることでしょう。野球の守備を例を挙げると、打者が打ってくるボールの軌道は、その時々に応じて変化することや、地面の状況などによりバウンドが変わることから、様々な状況に対応できる力を身につけなければなりません。特に9〜12歳頃に神経系が著しく発達する成長のピークを迎えるため、12歳ごろまでには、神経系に対するトレーニングを実施しておきたいところですが、※2ピークが過ぎた後でも、脳は刺激を与えることで発達するといわれており、そのため、12歳以上の選手にとっても多様な動きを学習することは、パフォーマンスアップにとって必要不可欠なことだと言えます。
そこで当施設では、文部科学省による幼児期運動指針ガイドブックに記載されている、「幼児期に身につけたい36の動作」という運動に、個々の選手にとって必要な運動をプラスし、運動の効率化、多様化に向けたプログラムを行っています。
参考/引用文献
※1:信岡ら,児童の疾走速度とピッチ・ストライド・接地時間・滞空時間の関係,体育学研究,2015,60巻2号 p.497-510
※2:Kleim JA, Jones TA. Principles of experience-dependent neural plasticity: implications for rehabili2tation after brain damage. J Speech Lang Hear Res. 2008 Feb;51(1):S225-39. doi: 10.1044/1092-4388(2008/018).
判断力,瞬発力の向上など
前項の感覚統合のところでお伝えしたように、運動能力を向上させるためには、眼や足裏の感覚、頭の位置などの感覚情報を脳が処理できるようにすることが大事になってきますが、その「インプット」された情報を、自分がイメージした動作へと実行できる力「アウトプット」する力も大事になってきます。その能力を鍛えるためには、何かの刺激に応じて瞬時に動くといったような判断力や瞬発力が必要になります。
このような能力は様々な競技で必要になることから、当施設では一例として、以下にある動画のようなトレーニングを実施し、判断力や瞬発力の向上に対するプログラムを行なっています。
※エリック R.カンデルほか(2022),カンデル神経科学 第二版,メディカルサイエンスインターナショナル